団体交渉で弁護士を入れることのメリット

はじめに

団体交渉は適切な方法で最適な判断を行いながら交渉を進める必要があります。

団体交渉において弁護士を入れる主なメリットをご紹介いたします。

1 団体交渉への同席

団体交渉は、会社と組合との間で組合員である社員の労働条件や労働環境について話し合いを行う機会です。このような言葉だけを聞くと、経営者のなかには団体交渉はあくまで話し合いの場なので、自分のこれまでの人生経験からすると「恐れるに足りず」と思われている方もいらっしゃいます。

もっとも、すべてのケースがそうだというわけではありませんが、団体交渉においては、組合は様々な戦術を駆使して会社に揺さぶりをかけ、有利な条件を引き出そうとしてきます。具体的には、団体交渉には組合から複数の構成員が出席することが多く、会社側の出席者はこれだけでも心理的に追い込まれることがあります。また、組合は団体交渉において会社のこれまでのやり方を威圧的な言葉で非難することが良く見受けられますが、会社側の出席者は威圧的な言葉に恐怖心を感じ、まともに反論ができない状況となることもあります。さらに、組合の委員長や構成員は労働法に関するかなり豊富な知識を有していることが多く、交渉のなかで「会社は◯◯法◯◯条に違反しているので早急に是正せよ」などと法律の知識を前提とする意見を求めてくることもあります。

このように、団体交渉における組合の言動はかなり戦術的であり、それと対等に渡り合うためには高度な交渉術が求められます。会社の代表者が一人で団体交渉に臨むのは丸腰で戦場に赴くようなものであり、良い結果が得られることは滅多にありません。会社の味方となってくれる弁護士に同席してもらい、心理的にも法律的にも安心できる状態で団体交渉に臨むべきです。弁護士が同席することで、組合の威圧的な交渉術を牽制し、紳士的な団体交渉を目指すことができます。また、法律的な議論となった場合もその場で対応することが可能になります。

当事務所のクライアントのなかには、最初は自分で対応できると思って初回の団体交渉に一人で出席してみたが、まったく歯が立たないことを経験し、その後当事務所にご依頼されたという方々も多くいらっしゃいます。一人で団体交渉に臨んで多少恐い目に遭ったという程度であれば特に問題はありませんが、なかには団体交渉を一刻も早く終わらせたいという気持ちから、会社にとってかなり不利な条件に応じてしまったというケースもあります。このような失敗をしないためにも、団体交渉の1回目から弁護士に同席してもらうことがお勧めです。

2 不当労働行為の防止

不当労働行為とは、端的に説明すると、会社が組合や組合員に対して行ってはいけない行為になります。

労働組合法第7条には、組合員であることを理由とする解雇その他の不利益取扱いの禁止(1号)、正当な理由のない団体交渉の拒否の禁止(2号)などの不当労働行為に関する条項が規定されています。

会社が不当労働行為に該当する行為を行った場合は、組合から労働委員会に対して不当労働行為救済の申立てがなされることがあり、会社はその事件への対応を迫られることになります。そして、労働委員会において救済命令が認められた場合はその命令に違反する行為を行うと罰金刑が課せられる恐れがあります。

このように、労働委員会に対する救済申立てがなされると、会社としては余計な負担が増えることになりますので、組合から不当労働行為であると指摘されるような行為はできる限り避けたほうが良いと言えますが、不当労働行為に該当するか否かの判断は意外と難しく、一人で判断してしまうと痛い目に遭うことがあります。

例えば、既に退職している者から団体交渉を申し入れられた場合にそもそも団体交渉に応じる義務がないと早計し、団体交渉の申入れを無視してしまっているケースがあります。もっとも、在職時の残業代や解雇の効力を争っている場合などについては、基本的には団体交渉に応じる義務があるとされていますので、団体交渉の拒否は不当労働行為に該当することになります。

また、組合からの団体交渉の申入れに対して、のらりくらりと団体交渉の先延ばしを図っているケースもありますが、不誠実な団体交渉も不当労働行為に該当しますので、正当な理由のない団体交渉の度重なる延期は不当労働行為に該当する可能性があります。

このような不当労働行為に関する失敗を防ぐためには、早い段階で弁護士に相談して、会社の方針や具体的な対応方法が不当労働行為に該当しないかチェックしてもらうことが重要になります。

3 書面作成やチェックの負担軽減

団体交渉においては、組合からは「要求書」と題された書面が事前に提出されることが多く、それに対して会社は文書で回答を求められることがあります。また、組合側が協定書という文書を事前に用意しており、調印してほしいと要求してくることがあります。また、団体交渉の結果、話し合いがまとまった場合には組合との間で合意書や覚書を交わすことが一般的です。

このように、団体交渉においては、会社の見解を文書で正確に表現し、組合に伝える能力が要求されますが、法的に瑕疵のない文書を作成することはそのようなことを経験したことがない方にとってはかなり負担となる作業になります。また、組合が作成した協定書等についても、内容的に問題ないものであるかを正確に判断することは経験がないとなかなか難しい場合もあります。

弁護士に依頼しておけば、要求書に対する回答書の作成や合意書の作成やその他組合からの文書のチェックをしてもらうことができ、会社の負担をかなり軽減することができます。

4 法律や判例に沿った解決を図ることができる

組合は時として法律が求めている以上の過大な要求をしてくることがあります。そのような場合に、法律や裁判の知識がないと本来的には応じる必要のなかった条件にまで応じることになってしまいます。組合の要求にどこまで応じる必要があるかについては、法律や判例の知識が必要不可欠になりますので、労働法に詳しい弁護士に事前に相談したうえで方針を決定することが重要になります。例えば、解雇した社員の事案について、組合からは解雇は無効だから裁判になったときの和解金の相場である2年分の給与を支払ってほしいと要求してくるような場合があります。もっとも、解雇の有効無効の判断はそもそも難しいものであるうえ、和解金の相場などは事案によって異なりますので、組合の言葉を鵜呑みにするのは危険です。弁護士とよく事案の内容や裁判になったときの可能性を検討したうえで会社の方針を決定すべきです。

また、そもそも会社のみで団体交渉に対応している場合は、組合はなかなか過大な要求を引っ込めないケースも見受けられますが、会社に弁護士が存在するという事実を組合に知らせるだけでも、組合の方針が軟化して法律や判例に沿った無難な解決が期待できることもあります。

5 当事務所へ依頼することのメリット

以上のとおり、組合との団体交渉に会社のみで対応することはリスクでしかありません。組合から団体交渉の申入書が届いたらすぐに弁護士に相談して、団体交渉への同席も含めた事件の処理を依頼すべきです。

弁護士のなかには、団体交渉の対応方法についてのアドバイスは行うが、団体交渉への出席はしないという方針の弁護士もいます。

もっとも、当事務所は会社からの強いニーズに応じてかなり以前から団体交渉への同席を積極的に行って参りました。当事務所はその経験を活かし、必ずや会社の強い味方となりますので、団体交渉の対応に不安のある方はお気軽にご相談ください。

文責:弁護士 津木陽一郎


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