依頼を受けた当事務所所属弁護士が、その労働組合がどのような労働組合かをご説明したうえ、今後の進み方についてご説明した。.....
退職勧奨とは
退職勧奨とは、会社から従業員に対する自主的な退職を促すための働きかけを指します。法的には、会社と従業員の合意により成立した雇用契約を、双方の合意により終了させる合意解約であると理解することができます。
退職勧奨は、従業員に会社を辞めてもらうという点では解雇と同じですが、解雇は法的になかなか有効と判断されないことから、問題社員を退職に導く方法として退職勧奨は良く利用されています。
退職勧奨のメリット・デメリット
1 会社にとってのメリット
退職勧奨は、解雇に比べてコストを抑えられることがあります。解雇には法的な手続きや違法性が伴う可能性があり、訴訟リスクも含まれます。一方、退職勧奨では従業員が自主的に退職するため、企業は法的なリスクを軽減できます。
また、強制的な解雇が多発すると、会社のイメージが悪化する可能性があります。退職勧奨は、従業員との円満な合意に基づくため、企業のイメージを損なわずに人員削減を行う手段となります。
さらに、退職勧奨は、従業員に対して自主的な選択を尊重する手段です。これにより、従業員は自らの意思で次のキャリアステップを考える時間が持て、精神的な負担が軽減されることがあります。
2 会社にとってのデメリット
退職勧奨は手間がかかります。一度話しただけでは、退職について了解を得ることができないことも多く、その場合は、合意に至るまで辛抱強く話し合いをする必要があります。
また、退職勧奨が適切に行われない場合、違法とみなされるリスクがあります。従業員が退職勧奨を強制されたと感じた場合、不当解雇として訴訟を起こす可能性があります。
退職勧奨が行われると、残留する従業員の士気が低下する可能性があります。退職勧奨を受けた同僚が去ることで、職場の雰囲気が悪化し、モチベーションが低下することがあります。
退職勧奨が違法と評価された裁判例
1 下関商業高校事件(最判昭55年7月10日)
退職勧奨の対象となった高等学校の男性教諭2名が、初回の退職勧奨以来一貫して退職には応じないとの意思を表明していたにもかかわらず、市の職員は執拗に退職勧奨を繰り返した。また、市の職員は退職まで勧奨を続けると述べて、心理的圧迫を加えた。男性教諭らは、違法な退職勧奨により精神的損害を被ったとして市、教育長、同次長に対して各50万円を請求した。
最高裁判所は、勧奨される者の任意の意思形成を妨げ、あるいは名誉感情を害する勧奨行為は、違法な権利侵害として不法行為を構成する場合がある。本件退職勧奨は、多数回かつ長期にわたる執拗なものであり、許容される限界を超えているとし、違法であると判断しました。
2 日本航空事件(東京地判平23年10月31日)
航空会社の契約社員であった客室乗務員が、上司から受けた退職勧奨が不法行為に該当するとして、上司及び会社に対して慰謝料500万円の支払いを求めた。
裁判所は、「いつまでもしがみつくつもりなのかなって」「辞めていただくのが筋です」「懲戒免職とかになったほうがいいんですか」などの表現を用いて退職を求めたこと、面談が長時間に及んだことなどから、社会通念上相当と認められる範囲を逸脱している違法な退職勧奨と判断し、慰謝料20万円が妥当と判示しました。
3 日本アイ・ビー・エム事件(東京地判平23年12月28日)
特別支援プログラムの応募勧奨(退職勧奨)の対象となった従業員4名が、会社が行った退職勧奨は違法な退職強要であり、これにより精神的苦痛を被ったとして、慰謝料を請求した。
裁判所は、労働者の自発的な退職意思を形成する本来の目的実現のために社会通念上相当と認められる限度を超えて、当該労働者に対して不当な心理的圧力を加えたり、又は、その名誉感情を不当に害するような言辞を用いたりすることによって、その自由な退職意思の形成を妨げるに足りる不当な行為ないし言動をすることは許されず、かかる退職勧奨行為は違法なものとして不法行為を構成すると判示しました。
退職勧奨の具体的な進め方
1 退職勧奨の方針を社内で共有する
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2 退職勧奨を伝える時の補助メモを作成する
退職勧奨の理由を整理したメモを作成し、退職勧奨を伝える際に説得的な話ができるように準備します。
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3 想定問答を作成する
対象社員からの質問・反論に対して、どのように回答するのかをあらかじめ決めておくことが重要です。なお、事案によっては、会社から対象社員に提示する金額等や退職理由(会社都合か自己都合か)も検討しておいたほうが良いでしょう。
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4 対象社員を個室等に呼び出す
退職勧奨は繊細な問題であるため、他の社員の目につかない個室等で行うようにしましょう。また、会社側の参加人数が多いと心理的圧迫を与えるおそれがありますので、会社側からは1,2人ぐらいの人数で退職勧奨に臨むことが適当です。
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5 退職勧奨を行う
退職勧奨の理由、会社として雇用維持のための努力を尽くしたことを説明した上で、退職してほしいという会社の意向を伝えます。
その際、退職強要とならないように注意する必要があります。例えば「自分から退職する意思がないということであれば解雇の手続をすることになる」などの表現を用いた場合に、退職の合意が無効と判断された裁判例があります。また、面談時間にも注意が必要です。1回あたりの面談時間は長くても1時間以内に止めることが妥当です。
なお、退職勧奨についての回答をその場で求めることは強引な印象を与えますので避けるべきです。再度の面談の期日を設けて、その時までに回答するように検討を促しましょう。
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6 退職届を提出させる(合意書を作成する)
退職後のトラブルを避けるために、退職の意思表示は口頭ではなく、退職届を必ず取得するようにしましょう。
また、対象社員に金銭を支給する場合や第三者への口外禁止条項を設ける場合は、合意書を作成しておくことがベストです。
弁護士に退職勧奨を相談・依頼するメリット
1 退職勧奨は非常にデリケートなものであること
既に説明したとおり、退職勧奨は、解雇よりハードルが低いとは言え、違法と評価されるケースがあります。
退職勧奨の時は一旦、対象社員から退職の合意をもらえたと思われる事例でも、事後的に対象社員から退職強要であるとか、不当解雇であると主張され、訴訟に発展してしまうこともあります。
こうなってしまっては、退職勧奨の努力が水の泡となってしまいますので、退職勧奨を行う上では専門家である弁護士に相談しながら進めるのがベストです。
2 書類作成が重要であること
退職勧奨を行う際には、事後の紛争を回避するために証拠収集をしっかりと行っておくことが大切です。退職届、退職勧奨に関する合意書など、専門家である弁護士にその作成を依頼したほうが安全であることは言うまでもありません。
3 労働審判や訴訟に発展した場合の早期対応
万が一、事後的に対象社員から労働審判等を申し立てられた場合、即座に裁判所へ提出する答弁書を作成する必要がありますが、退職勧奨の際から相談をしていた弁護士がいるとその対応もスムーズになります。
問題社員でお困りの経営者の方々はJPS総合法律事務所まで
当事務所の弁護士は、問題社員への対応、解雇、退職勧奨について豊富な経験を有しておりますので、問題社員でお困りの経営者の方々はお気軽にご相談ください。皆様を全力でサポートいたします。
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