弁護士コラム

売掛金の管理~近々予定されている民法改正が与える影響について~

~2016年8月19日  弁護士津木陽一郎~


 

 民法が120年ぶりに大改正される予定です。改正の内容は多岐に渡りますが,企業が抱える「売掛金の管理」については良い方向での影響がありそうです。
 売掛金の管理で注意しないといけない点は「消滅時効」です。消滅時効とは一定の期間が経過することによって,債権が消滅してしまうという制度です。売掛金についても,何もしないまま放置しておくと一定の期間の経過によって消滅してしまいます。
 そして,現行法においては,短期消滅時効という規定があり,1年~3年という短期間で時効が完成してしまう債権が数多くありました(現行民法第170条~第174条)。例えば,工事の請負代金は3年,商品の売買代金は2年,飲食代金は1年というように規定されています。
 しかしながら,予定されている民法改正においては,上記のような細々とした短期消滅時効をすべて廃止し,債権の種類に関係なく,一律の期間を設けることとしました。
条文としては,①債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき,②権利を行使することができる時から十年間行使しないとき,という内容に変更されます。つまり,請負代金や売買代金という債権の種類に関係なく,5年ないし10年で時効が完成するということになり,現行の内容と比較すると時効完成までの期間が長くなることになります。
 よって,一般論としては,企業の債権管理は容易になるものと思われます。もっとも,一方で,現行民法においては10年の時効期間であったものが,5年の期間となってしまう場合もありますので,その点は注意が必要です。
 ただ,まだ現時点においては短期消滅時効が適用されますので,債権の管理について不安を感じられる場合は当事務所にお気軽にご相談ください。

 


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