飲食業向け顧問サービス

1.飲食業を取り巻く状況

飲食業のみなさまへ

飲食業界のみなさまは衣食住のうちの「食」に関わる、日常生活に欠くことのできないサービスを提供しておられます。

お客様にとって気軽に利用できるサービスである分、予約のキャンセルやクレームへのハードルが低く、日常的なトラブルに巻き込まれやすい業界でもあります。

また、昨今の飲食業界においては、深夜までサービスを提供することが一般的であり、社員の労働時間は深夜まで及んでしまうことが多く見受けられます。

もっとも、「働き方改革」が唱えられる現在、労務管理は企業を守るための最重要課題であり、これをしっかりできていない飲食店は様々なリスクを抱えることになります。

飲食業界が社会へ貢献している度合いは高く、今後も業界全体の発展が期待される分、些細な法的リスクを回避しなければなりません。

以下、飲食業によく発生する法的問題・法的リスクを紹介したいと思います。

2.飲食業界の抱える法的問題やリスク

(1)従業員からの残業代請求

現状

最近、退職した社員から未払いの残業代を請求される案件が増加しております。

飲食店の場合、労働時間の管理が不十分であったり、実際の労働時間が長時間に及んでいる事例が散見され、場合によっては300万円以上の未払い残業代を請求されることもあります。

一人の社員だけの問題であればいざ知らず、複数名の社員がまとまって会社を訴えてきた場合は会社の経営にも重大な影響を及ぼすこともあり得ます。

事前の対策

労働時間の管理

まずは、労働時間の管理を十分に行う必要があります。

後日の裁判や労働審判において、会社の言い分を認めてもらうためには、労働時間を管理してその客観的証拠を残しておくことがとても重要です。

具体的にはタイムカードであったり、出退勤簿などを整備して、社員の労働時間を正確に管理しておくことが求められます。

労働時間の管理を怠っていた場合、社員の言い分に沿った労働時間が認定されることもあり、会社としては想定外の高額な残業代を支払う場合もあります。

就業規則の整備

次に、就業規則を整備する必要があります(当然のことながら、社員に残業をしてもらう前提として36協定も必要になります)。

尚、後で説明しますが、固定残業代を導入する場合は、就業規則などでそのルールを明確にしておくことが大切です。

固定残業代の導入とその注意点

固定残業代を導入することも考えられます。

固定残業代とは、会社が一定時間の残業を想定し、あらかじめ月給に残業代を固定で記載し、残業時間を計算せずとも固定分の残業代を支払うという制度です。

この制度を導入すれば、確かに、煩雑な残業代の計算を回避することができ、経営者にとってはとてもありがたい制度になります。

もっとも、この固定残業代という制度は、実際の裁判においては、そもそもその有効性が厳しく判断されており、この制度を設けたために逆に多くの残業代を支払わなければならない場合もあります。

固定残業代の導入にあたっては専門家に相談しながら進めることが大切です。

「店長」という立場の社員の取扱い

飲食店によく見られる問題でありますが、特に多店舗展開している飲食店においては「店長」という立場の社員が存在します。

経営者としては、この「店長」という立場の社員については「管理監督者」にあたるものと考え、残業代支給の対象から除外していることがよく見受けられます。

しかしながら、実際の裁判において「管理監督者」性が肯定されるためにはかなり厳格な条件を満たす必要があり、一般的な「店長」という役職ではなかなか難しいのが現実です。

「店長」という呼称から安易に判断するのではなく、実質的な役割や権限から判断することが求められます。

事後の対策

社員から残業代請求があった場合、社内において当該社員の言い分を検討し、何らかの対応策を考えていくことが多いと思われます。

もっとも、残業代の計算等は想像以上に複雑なものであり、通常の仕事をこなしながら検討することはなかなか難しいものです。

このような場合、なるべく早い段階で専門家である弁護士に相談することをお勧めいたします。早い段階で相談することにより、会社の言い分を正確に相手方である社員や裁判所等に主張することが可能になります。

(2)社員のうつ病発症による長期休職

現状

最近、過重労働からうつ病などの精神的な病気を発症し、労災申請に至るケースが増加傾向にあります。

また、パワハラやセクハラを原因として社員がうつ病に陥ってしまうケースも散見されます。

特に、飲食業界においては、労働時間が長くなりがちです。

また、一般的に店舗ごとの職場の規模が小さいことから人間関係が複雑化しやすく、店長やその他の上司から社員やアルバイトに対するパワハラ等のハラスメントが発生しやすい環境となっています。

会社にとって、雇用している社員が長期間にわたって働けないこと自体、損失であることは間違いありませんが、さらにそれを超えて、復職がいつになるのかはっきりしない場合や当該社員から原因が会社にあるとして損害賠償を請求されるケースもあり、こうなってしまった場合は会社の損失は著しいものになります。

事前の対策

・ 就業規則において、休職及び復職に関する定めを設けておくことが必要になります。

就業規則の一般的なひな型を利用している場合、会社の状況に即していないこともありますので、既存の就業規則を見直す必要があります。

・ 精神障害の労災認定の過程においては、中長期の時間外労働の時間が認定の基準となっています。

具体的には、発病直前の3か月間連続して1月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行った場合などが基準となっています。

よって、経営者は社員の労働時間を正確に管理し、上記の基準を超えるような労働をさせないことが事前の防止策としては重要になります。

特に、飲食店においては時間外労働が多くなりがちな傾向があります。飲食店の経営者は特に社員の労働時間や体調面に注意を払う必要があります。

・ また、パワハラやセクハラについては、社内において対応の手順を事前に策定しておき、このような問題が発生した場合に適切な対応ができる体制を整えておくことが重要になります。

事後の対策

・ 就業規則の休職に関する規定を超えて当該社員が職場に復帰できない場合、会社としてはその社員に対して会社をやめてもらうことを検討せざるをおえない状況になります(社員でいる限り、会社には社会保険料等の負担があります)。

このような場合において、会社の求めに応じて当該社員が自主的に退職してくれる場合はいいのですが、退職の意向がない場合には特に適切な対応が必要になります。

具体的には、即座の解雇という強力な手順を踏むのではなく、粘り強い退職勧奨を行うことが大切になります。尚、過去の裁判例において、就業規則で定めた休職期間中に会社から解雇を行った場合、その解雇が無効と判断されたケースがあります。

・ 当該社員が客観的には復職できる体調ではないのに、自己のかかりつけの医師の診断書を持って復職を求めてきた場合も問題になることがあります。

会社としては、当該社員に対して会社の指定医等の再度の診断を求めることになりますが、この前提として就業規則の内容を整備しておく必要があります。

・ 体調不良の社員が退職することになってしまった場合、労災申請や会社に対して損害賠償の請求がなされることがあります。

こうなってしまった場合は、なるべく早期に専門家に相談することをお勧めします。精神障害の場合は「業務起因性」(会社の業務とうつ病という結果の間の因果関係)が特に問題になりますので、早期に会社の主張を整理しておくことが大切になります。

(3)社会的評価の下落を理由とする人材不足

現状

昨今、人材確保は飲食店経営の最重要課題であり、飲食店の経営者は毎日のように社員やアルバイトの募集を行っていることが多いと聞いております。

人材の募集の方法としては、インターネットの媒体を利用されることも多いかと思います。

もっとも、最近は、社員が会社を評価するサイト等も数多く運営されており、そこで会社の悪い点を書かれてしまうと「ブラック企業」とのレッテルが貼られることになってしまい、今後の人材確保に著しい影響が出ます。

対策

この問題については特効薬はありません。飲食店の経営者として労務管理をしっかり行っていくこと、特に、労働時間の管理や就業規則の整備等を実施していくことが大切になります。

ただ、インターネット等に不当な内容の投稿がされた場合、その投稿を削除することができる場合もありますので、弁護士に相談されることをお勧めします。

(4)キャンセルのリスク

現状

例えば、当日になり10名様の団体予約がキャンセルになった場合、お店への打撃が小さくない一方、キャンセル料を取れずに泣き寝入りしている経営者の方は多いのではないでしょうか。

飲食店はサービス業なので、お客様の評判を考えるあまり無断キャンセル等に対する責任追及を控える傾向にあります。

しかし、電話ではなくインターネットによる予約が日常化した今日では、予約がしやすくなった半面、キャンセルへのハードルが下がっている現実があります。

飲食店におけるキャンセル問題は、インターネット情報網が発達した現代の特有の問題であるといえます。

対策

対策として、①予約時におけるお客様情報の把握、②キャンセル料が発生することの説明をすることが大切です。

①については万が一損害賠償請求をすることになった時のための情報収集として必要になるのですが、お客様の苗字に加え名前の聞き取り、団体のお客様については団体名を把握するなど、聞き取りマニュアルの作成が必要になります。

②については損害賠償の額を明確にするという視点から、キャンセル規定を作成し、それを簡潔にお客様に説明するマニュアルの作成が必要となります。

(5)立ち退き問題

現状

更に、店舗を賃借し経営をしている例も多いので、立ち退き等の問題も生じます。

せっかく良い立地に出店し、お店の認知度も増え、経営が軌道に乗ってきた段階での立ち退き問題は、飲食店経営者にとって死活問題にもなりかねません。

対策

対策として、賃貸借契約締結の際の契約条項を精査する必要があります。また、店舗の使用方法についても見直す必要がある場合もあります。

いずれにしても、顧問弁護士のアドバイスを仰ぐことが重要です。

(6)風評被害

現状

インターネット上で個人の意見が気軽に発信できるようになりましたが、その分、悪意のある飲食店の評価に関する投稿・発信も増えてきました。

インターネット上の評判が飲食店の売り上げを左右すると言われることもあるほど、ネット上の風評被害のリスクは深刻な問題となっています。

対策

風評被害については事前の対策に加え、事後的な対策が必要になります。

情報の拡散性を考えると、ネット上の不都合な投稿を迅速に削除することが重要なのですが、普段から気軽に相談している顧問弁護士がいれば、問題となる投稿を素早く削除することができます。

④まとめ

このようなリスクを抱えているにもかかわらず、飲食業の経営者の方は、弁護士との関わり合いが希薄な傾向があります。「もう少し早く相談してくれれば」という事例が少なからずあるというのが現状です。

当事務所は、飲食店の経営者を悩ませる問題をフルサポートさせて頂いており、労務問題、賃貸借問題、債権回収問題、インターネット問題等、幅広く法的サービスを提供しております。上記法的リスクをあまねく解消するノウハウを有しております。

初回相談料は無料となっておりますので、問題が大きくなる前にお気軽にお問い合わせください。


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