同一労働同一賃金とは

同一労働同一賃金とは

 平成28年12月20日に同一労働同一賃金ガイドライン案が作成され、平成30年6月29日に働き方改革関連法が成立しました。
 同一労働同一賃金とは、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

 大企業は平成32年4月、中小企業は平成33年4月から正式に導入される見込みです。

 このような状況の中、法律の成立に先駆けて「同一労働同一賃金」に関連する二つの事件の最高裁判決(ハマキョウレックス事件・長澤運輸事件)が出されましたのでご紹介いたします。

両事件の概要

 両事件とも、労働契約法20条の「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」との関連で、有期・無期契約労働者間の労働条件の差異の不合理性が争点となりました。

 両事件の概要を簡単に説明しますと、ハマキョウレックス事件は、正社員と契約社員との間で職務内容に大きな違いがないにもかかわらず、無事故手当や作業手当の点で格差が設けられていることの違法性が争われ、長澤運輸事件は、職務内容や配置の変更範囲の点で違いがないにもかかわらず、定年後再雇用労働者の賃金が定年前の正社員より低く設定されていることの違法性が争われました。

裁判所(最高裁)の判断

⑴ ハマキョウレックス事件

 住宅手当を契約社員に支給しないことは不合理ではないとしましたが、皆勤手当、無事故手当、作業手当、給食手当、通勤手当の差異については不合理なものと認めました。

 例えば、無事故手当については、『無事故手当は、優良ドライバーの育成や安全輸送による顧客の信頼獲得を目的として支給されるものであると解されるところ、安全運転・事故防止の必要性は、職務内容が異ならない契約社員と正社員の間に差異が生じるものではなく、将来の転勤可能性や人材登用可能性の有無により異なるものではない。したがって、契約社員に無事故手当を支給しないことは不合理と認められる』と判断しました。

⑵ 長澤運輸事件

 住宅手当、家族手当、役付手当、賞与を嘱託乗務員に支給しないことは不合理ではないとしましたが、一方で、精勤手当や超勤手当、時間外手当の差異については不合理なものと認めました。

 例えば、住宅手当・家族手当については、『正社員には幅広い世代の労働者が存在し、そのような正社員について住宅費および家族扶養のために生活費を補助することには相応の理由があるのに対し、嘱託乗務員は、正社員として勤続した後に定年退職した者であり、老齢厚生年金の支給を受けることが予定され、・・・これらの事情を総合考慮すると、嘱託乗務員と正社員との職務内容および変更範囲が同一であるといった事情を踏まえても、嘱託乗務員に対して住宅手当、家族手当を支給しないことは、不合理と認められない』と判断しました。

 一方で、精勤手当については、『精勤手当は、その支給要件・内容に照らせば、従業員に対して休日以外は1日も欠かさずに出勤することを奨励する趣旨で支給するものである。嘱託乗務員と正社員との職務内容が同一である以上、両者の間で皆勤を奨励する必要性に相違はないというべきである。したがって、嘱託乗務員に精勤手当を支給しないことは不合理と認められる』と判断しました。

⑶ 次に、両判決は、労契法20条について

〇 その趣旨は、有期契約労働者については合理的な労働条件の決定が行われにくいこと等を踏まえ、その公正な処遇を図ることにあること

〇 同条の規定は私法上の効力を有し、同条に反する有期契約の部分は無効となること

〇 一方で、同条に契約を補充する効力はなく、正社員就業規則を有期契約労働者に適用できないこと

などと判示しています。

この判例から学ぶこと

⑴ 今後、「不合理な賃金格差を理由とする損害賠償請求」が増えることが大いに予想されます。

⑵ 契約社員の賃金格差については、より厳しい目が向けられる可能性があります。

 一方で、定年再雇用者に対しては、これまで通りある程度の賃金格差が許容されるでしょう。

 正社員と非正社員とで格差を設ける場合、その妥当性を慎重に検討する必要があります。

⑶ 上記の判例においては、各手当ごとにその合理性の有無が検討されています。

 様々な名目の手当を支給している会社は、その支給目的について今一度検討するとともに、正社員と非正社員で格差を設けている場合はその妥当性も検討する必要があるでしょう。

 当事務所は人事労務を得意とする法律事務所です。手当の支給状況に疑問がある場合はお気軽にご相談ください。

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